ネットゲーム'90『蓬莱学園の冒険!』
ネットゲーム'90『蓬莱学園の冒険!』は、有限会社遊演体(当時)が行なったネットゲームの第二作目です。ネットゲームとは、インターネット上のオンラインゲームのことではなく、郵便を用いた双方向ゲーム(PBM、メイルゲームなど呼ばれる)の中で、特にライブ性に拘ったものを指します。
ゲーム全体を統括するグランドマスター(以下GM)に、現在有限会社エルスウェアの代表取締役を務める柳川房彦(新城カズマ)。前作ネットゲーム88のGMであった有坂純(六行道士)、現遊演体代表取締役の小泉雅也らと、当時よりゲーム業界にて名を馳せていた人材が大量に参加。
巨大学園での冒険活劇という基本コンセプトと、巨大学園での冒険活劇という基本コンセプトと、参加者の知的好奇心を呼び起こすストーリー展開により、前作ネットゲーム88の五倍以上の参加者を集め、遊演体とネットゲームの知名度を一気に押し上げました。
『蓬莱学園の冒険!』が発表されたのは、1989年8月に滋賀県雄琴温泉にて行なわれたネットゲーム88のファイナルイベントの席上のことでした。その後、TACTICS誌上で中村博文画伯のイラスト付の見開き広告と特集記事が掲載され、一気に参加者が集まりました。ドラゴンマガジン誌にもカラー広告が掲載され、参加者が殺到したため1990年3月で新規参加者の募集を打ち切っています。 このとき涙を飲んだ人も多くいて、後に『蓬莱学園の冒険!』が『伝説』と呼ばれる一因になったとかならなかったとか。
縁あって『蓬莱学園の冒険!』に参加出来た参加者の元に送られてきたのは、情報誌『蓬莱タイムズ』と謎の断片。右も左も分からずに、取り合えず『蓬莱タイムズ』を読んでみると、色々な事件が起こっています。更に読み進めていくと最後のあたりに選択肢が。
同封のはがきに次回取りたい選択肢を書き込み、遊演体に宛てて投函すると、また翌月『蓬莱タイムズ』と選択肢の結果が書かれた行動結果(プット)が帰ってくるので、それを見てまたはがきを投函するといった繰り返しでゲームは進んでいきます。
選択肢には「勉強する」だの「~に会う」だのといった定型の行動が出来る「定番行動」と、「定番行動」にない自由な行動が記述できる「フリーアクション(以下FA)」、そしてその中間の「自由定番」の大きく分けて三つがありました。もちろん一長一短があって、「定番行動」は難易度は低いですが、帰ってくるプットは非常に限定されたものしか帰って来ません。反対にFAは行動内容を自由に記述できますので難易度は高いですが、正解を引き出せると、地球空洞世界を発見できたり、学園を裸人で埋め尽くしたり、甲子園で優勝できたり、はたまた世界の選択を左右したり、様々なことが出来ました。
後に柳川房彦が語ったところによると、FAに限らず『蓬莱学園の冒険!』の行動採用基準は「ゲーム内の事象をいかに上手に解釈出来るか?」だそうで、そも地球空洞世界以外にも二つの『正解』が用意されていたとのこと。もしそうなっていれば、後の蓬莱学園ワールドだけではなく、巨大学園物ジャンル全体が大きく変わっていたかもしれません。
ただしFAの成功率は一説によると約10%。その中でストーリーに大きく絡めた参加者はごく限られていたので、次回作以降ではこのスタイルは取られておらず、これもまた『蓬莱学園の冒険!』が『伝説』と呼ばれる一因を作っています。
こうして生み出された『蓬莱学園の冒険!』のストーリーは、複雑な入れ子構造になっていて、様々なストーリーが密接に絡み合っているために解説することは非常に難しいものがあります。
大きく分けると、謎の石「応石」や地球空洞世界「月光洞」を中心とした冒険活劇ストーリーを柳川房彦、学園内の政治劇や軍事スリラーを六行道士(有坂純)、研究部や理論系を小泉雅也が担当し、その間を埋めるように相原秋行、水原静、川鍋充弥などの実力派マスターが様々なストーリーを展開していました。
残されたプットだけでも段ボール箱何箱どころでは済まず、その全貌は今となってはつかみようがありません。
その巨大学園物という特性を最大に活かした「何でもあり」な懐の深さも、『伝説』の大きな要因となっています。
ゲーム期間 | 1990年1月~91年1月(全12回) |
参加費 | エントリー料3,000円(1,000円) 月会費1,000円(500円) ( )内はサブキャラクター |
配布物 | 平成2年度新・転入生募集要項 蓬莱タイムズ1月号~12/1月合併号 航海日誌断片 生徒手帳(ルールブック) |
刊行物 | 90年度宇津帆島全誌(総集編) |
イベント | 場所:東京コマ旅行会館 日時:1990年12月25~26日 参加費:12,000円 内容:ネットゲーム・オスカー授賞式、抜き打ち期末試験、マスター報告、C#理論検討会、応石・地図販売他 |
スタッフ |
【グランドマスター】 【マスター】 【蓬莱タイムズ編集】 |